なんでもない木曜日だった
なんでもない夏の夜だった
兄さんが僕を呼びだしたのは
その朝のことだった
兄さんが呼び出してくれるなんて
珍しいこともあるもんだ
ただひとつ気になることがある
なぜこんな時間に・・・?
そんな疑問も腑に落ちないまま
兄さんはやってきた
暗闇に浮かぶその顔は
笑っているように見えた
そこにいるであろう兄さんは
ピクりとも動かない
今日は熱帯夜だと聞いた
凍りついた夜だ
僕にはエラがない
魚のようなエラがない
たとえ清い富士の水でも
生きていけない
なんでもない木曜日だった
なんでもない夏の夜だった
兄さんが僕を呼びだしたのは
その朝のことだった